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なぜ紳士は、感謝を言葉にするのか。

「感謝している。だから、わざわざ言わなくても伝わっている。」

そう考えたことは、誰にでもあるかもしれません。

家族。長く付き合う友人。いつも支えてくれる仕事仲間。

距離が近くなるほど、「ありがとう」は省略されやすいものです。言わなくても分かっているだろう、と。

しかし、心の中にある感謝と、相手に届いた感謝は、本当に同じものでしょうか。

感謝は、心の中にあるだけでは相手には見えません。だからこそ、その気持ちを言葉にする。

そこには、単なるマナー以上の意味があるように思います。

感謝は、言葉になって初めて相手へ届く

装いには、無言のまま相手に何かを伝える力があります。

整えられた一着のスーツは、それだけで相手への敬意や礼節を表すことがあります。いわば、外見という言語です。

感謝も、これとよく似ています。

どれほど深く感謝していても、それが胸の内にとどまっていれば、相手にはその気持ちを見ることができません。

「ありがとう」と言葉にする。あるいは、一枚のお礼状という形にする。

そうすることで初めて、

「あなたがしてくれたことを、私はきちんと受け取りました。」

という気持ちを相手へ届けることができます。

感謝を口にすることは、相手が自分のために費やしてくれた時間や労力、その中にあった配慮を認めることでもあります。

「ありがとう」は、相手への敬意

ジョン・ブリッジズ著『ドアはあけたらおさえましょう』では、「お願いします」と「ありがとう」を頻繁に、進んで口にすることが、紳士の行動規範として重視されています。

同書では、紳士であることを複雑なマナーの知識だけではなく、他者が気兼ねなくいられるようにする思慮深さや思いやりと結びつけて考えています。

マナーをどれだけ知っているか。

それ以上に、目の前にいる人へどのような態度を取るか。

DEFFERTでは、そこに大人の品格が表れるのではないかと考えています。

褒められたときにも、人柄は現れる

感謝が必要なのは、何かをしてもらったときだけではありません。

褒められたときにも、同じことが起こります。

たとえば、ネクタイを褒められたとします。

「こんな古いネクタイが?」

謙遜のつもりで、つい否定したくなることがあります。

しかし、それは相手が差し出してくれた好意まで否定してしまうことになりかねません。

そんなときは、

「ありがとうございます。そう言ってもらえてうれしいです。」

と、素直に受け取る。

謙遜を否定する必要はありません。ただ、相手が差し出してくれた好意を、きちんと受け取ることもまた、一つの礼節ではないでしょうか。

小さな「ありがとう」に、品格は宿る

職場でコピーを頼む。

店員に何かをしてもらう。

同僚が少し手を貸してくれる。

大きな恩義ではないからこそ、こうした日常の小さな場面では、感謝を省略してしまいがちです。

「これ、コピーしておいて」ではなく、

「これ、コピーをお願いします。」

そして受け取ったときには、

「ありがとう。」

ほんの一言です。

けれど、こうした小さな言葉に、その人が普段どのように人と接しているのかが表れることがあります。

秘書にも、同僚にも、店員にも。

相手の立場によって敬意を変えない。

そんな振る舞いに、静かな品格を感じます。

感謝は、感じたときに伝える

紳士の作法やビジネスマナーを扱った資料には、仕事がうまく運んだときには早めに感謝を表すことや、会食や接待では、その場で礼を伝えるだけでなく、後日あらためて電話や手紙、メールなどで感謝を伝えることを勧めるものがあります。

手書きのお礼状を重んじる考え方もあれば、現代のビジネスマナーでは、メールや電話で速やかに伝えることも一つの方法として紹介されています。

大切なのは、「手紙でなければならない」という形式ではないのでしょう。

「ありがとう」は、感じたときに伝える。

その姿勢そのものに、相手への敬意が表れるのだと思います。

装いと、言葉と

落合正勝著『男の服装術』には、こんな言葉が引かれています。

「衣服は身の表なり。人交わるに、先ず形を見、次に言を聞き、次に行いを見る。」

人と出会うとき、まず目に入るのは装いです。

そして、その人が発する言葉。その後の振る舞い。

美しいスーツを着る。

靴を磨く。

身だしなみを整える。

それは、相手への敬意を表す方法の一つです。

しかし、その先にどんな言葉を選び、どんな態度で人と接するのか。

そこまで含めて、その人の品格になっていくのではないでしょうか。

装いを整えることと、感謝を言葉にすること。

一見すると、まったく別の話です。

けれどDEFFERTでは、その二つに共通するものがあると考えています。

どちらも、相手への敬意を形にすること。

紳士は、小さなことを見逃さない

紳士とは、難しいマナーをすべて知っている人のことではないのかもしれません。

誰かが自分のためにしてくれた、ささやかなことを見逃さず、それをきちんと言葉にできる人。

「ありがとう。」

たった五文字の言葉です。

けれど、その一言を自然に言えるかどうかに、その人が普段どのように他者と向き合っているのかが、少しだけ見える気がします。

服装を整えることと、言葉を整えること。

その両方が、大人の装いなのだと思います。