KNOWLEDGE

オーダースーツと既製スーツの違いとは?自分に合う一着の選び方

「オーダースーツのほうが、既製スーツより格好いい」

そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。

しかし、スーツ選びはそれほど単純ではありません。

既製スーツには既製スーツの合理性があり、オーダースーツにはオーダーならではの価値があります。そして、「オーダー」という名前そのものが、良い一着を約束してくれるわけでもありません。

では、オーダースーツと既製スーツは何が違うのでしょうか。

それぞれの特徴を比べながら、スーツを選ぶときに本当に見るべきものを考えてみましょう。

オーダースーツと既製スーツの違いとは?

既製スーツは、規格化された体型やサイズをもとにあらかじめ作られた完成品から、自分の身体に近いものを選ぶ服です。

一方、オーダースーツは、一人ひとりの身体の寸法や、前肩・猫背・反身・左右差といった体型の癖、さらに用途や好みに合わせて調整・製作する服です。

大きな違いを簡潔に表すなら、既製服は「できあがった服から身体に合うものを選ぶ」のに対し、オーダー服は「身体に合わせて服を整える」ということです。

ここに、両者の根本的な違いがあります。

既製スーツには、既製スーツの良さがある

オーダースーツ店の記事だからといって、既製スーツを否定する理由はありません。

既製スーツには、完成した一着を実際に試着し、その場で仕上がりのイメージを確認できるという大きな利点があります。

裾など必要な箇所を調整すれば比較的早く着用できるため、急いでスーツが必要な場合にも合理的です。

また、自分の体型が既製服のサイズやシルエットに合っているのであれば、既製スーツでも美しく着ることはできます。

「既製だから劣る」という考え方は、少し違います。

オーダースーツが持つ価値

一方、オーダースーツの大きな特徴は、身体に合わせて調整できる範囲にあります。

人の身体は、左右が完全に同じとは限りません。

前肩、猫背、反身など姿勢や体型にもそれぞれ違いがあります。

オーダースーツでは、そうした身体の特徴を見ながら寸法や体型を補正し、一人ひとりに合わせた一着へ整えていきます。

さらに、生地だけでなく、裏地、ボタン、ポケット、ベント、袖口など、さまざまな仕様を選べることもオーダーならではの楽しみです。

単に「サイズを細くする」のではなく、身体と服のバランスを整える。

そこに、オーダースーツの本来の価値があります。

「オーダースーツ」にも種類がある

ひと口にオーダースーツと言っても、仕立て方はひとつではありません。

パターンオーダー

試着用のサンプルなどを基準にして、着丈や袖丈、ウエストなどを調整していく方式です。

イージーオーダー

採寸用のゲージ服を着用し、複数の型紙の中から身体に近いものを選び、そこから寸法調整や体型補正を加えていきます。

フルオーダー・ビスポーク

一人ひとりのために型紙を起こし、仮縫いなどの工程を経ながら仕立てていく方法です。

ただし、これらの呼称や補正範囲には資料や店舗によって違いがあります。

大切なのは名称だけを見るのではなく、その仕立て方で何を、どこまで調整できるのかを理解することです。

オーダーなら必ず格好良くなるのか

ここは、とても大切なところです。

「オーダースーツだから、必ず格好良くなる」とは限りません。

身体に合わせすぎることで、かえって体型の癖を強調してしまうこともあります。

また、必要以上に細く仕立てれば、動きにくくなったり、不自然なシワが生まれたりすることもあります。

オーダーという仕立て方式そのものよりも、身体をどう見て、どのようなバランスへ整えるのか。

その判断が重要になります。

オーダー=細身、ではない

オーダースーツと聞くと、「身体にぴったり張り付くようなスーツ」を想像する方もいるかもしれません。

しかし、細ければ細いほど美しいわけではありません。

タイトすぎるスーツは、座ったときや身体を動かしたときに生地が引っ張られ、不自然なシワが生まれやすくなります。

美しいスーツには、身体に対して適切なゆとりが必要です。

オーダーの価値は、身体を細く見せることではなく、身体に必要なゆとりを残しながら、美しいバランスへ整えること。

この違いは、スーツを選ぶうえで知っておきたいポイントです。

オーダースーツで重要なのは「誰が見るか」

オーダースーツは、メジャーで身体の寸法を測れば完成するものではありません。

どのような仕事をしているのか。

立っている時間が長いのか、座っている時間が長いのか。

どんな場面で着るのか。

そして、本人がどのような着心地や印象を求めているのか。

そうした情報と身体の特徴を見ながら、採寸やフィッティングを判断するのがフィッターの役割です。

そのため、オーダースーツの仕上がりは、仕立て方式の名称だけでなく、採寸やフィッティングを行う人の技術や判断にも大きく左右されます。

 

結局、既製とオーダーのどちらを選べばいいのか

既製かオーダーかという名前そのものに、絶対的な優劣があるわけではありません。

既製服のサイズやシルエットが身体に合い、すぐに必要なのであれば、既製スーツは合理的な選択です。

一方で、既製服では肩や胸、ウエストなど、どこかを合わせると別の場所が合わない。左右差や姿勢の癖が気になる。着心地や仕様にもこだわりたい。

そうした場合には、身体に合わせて調整できるオーダースーツの価値を感じやすくなります。

そしてオーダーを選ぶなら、仕立て方式の名前だけでなく、誰が身体を見て、どのような考えで一着を整えてくれるのかも見ておきたいところです。

「オーダースーツ」という名前を買うのではない

「オーダースーツ」という言葉を買うことが、目的ではありません。

大切なのは、自分の身体、仕事、着る場面、そして好みに静かに調和する一着に出会うことです。

既製か、オーダーか。

その名前の先に、本当に見るべきものがあります。