

スラックスの裾に、一段の折り返しがある。足元にさりげなく表情を添える、この小さな仕様にも来歴があります。
ダブル裾は、屋外で裾を泥や水から守るため、一時的に折り返した工夫に由来すると説明されています。19世紀末の英国を挙げる資料がありますが、田舎のぬかるみやボート遊びなど、語られる場面は一つではありません。
ここで分けておきたいのは、着る人がその場で裾をまくることと、折り返しを仕立ての仕様として備えることです。由来の説明では、前者の実用的な動作が、後者の形につながったとされています。
19世紀末の英国の田舎で、ぬかるみに裾を汚されないために一時的に折り返した、という説。
ツイードの背広で屋敷内を散策する際、泥が付かないよう配慮した折り返しとして説。
19世紀末の英国のボート遊びで、乗り込む際に裾を折り返したことに由来するという説。
これらを、一つの出来事を順に追った歴史としてまとめることはできません。それぞれの説明から見えてくるのは、屋外で裾を守ろうとする実用の発想です。

ダブル裾の由来や普及を語るとき、英国王エドワード7世の名も登場します。
ドワード7世が散歩やスポーツのために裾を上げたことが始まりといわれています。
諸説ありますのでこの話は、由来や普及を伝える逸話として受け止めるのが適切でしょう。
シングルはすっきりした印象、ダブルはスポーティー、あるいはカジュアル寄りの仕上げとして説明されることがあります。
折り返しの重みも、ダブル裾の特徴として挙げられます。裾の重みとパンツの落ち感やラインとの関わりもあります。
どちらが上質かを決めるための違いではなく、その一着の見え方を考えるための違いです。
ダブル裾がカジュアル寄りと説明されることと、ビジネスに使えないことは別です。
一方、タキシードや燕尾服のパンツは、折り返しのないシングルで仕上げるのが伝統的な規範とされています。
この説明を、結婚式に着るすべてのスーツへ、そのまま広げることはできません。まず、どの種類の服を、どの場面で着るのかを分けて考えたいところです。

裾の折り返しには、屋外で服を守る工夫に由来するという説明があり、王にまつわる逸話も伝えられています。
背景を知ると、シングルかダブルかという選択も、単なる好みから少し深まります。その一着を、どこで、どのように着たいのか。足元の小さな仕様が、装い全体を考えるきっかけになります。
DEFFERTが大切にしたいのは、装いの背景を知り、用途と全体の見え方から仕様を考えること。
小さな折り返しにも、装いを選ぶ楽しさがある。
今回の資料では、英国の田舎のぬかるみ、屋敷内の散策、ボート遊びなど、複数の場面が紹介されています。一つの出来事に確定することはできません。
由来や普及に関する逸話は紹介されていますが、今回の資料では発明者と確定できません。
シングルとダブルのどちらか一方だけを正解とするのではなく、用途と全体の見え方を踏まえて考えます。
折り返しのないシングルで仕上げるのが、伝統的な規範とされています。
